75歳以上医療費二割負担

75歳以上医療費二割負担

75歳以上医療費二割負担

梅雨を飛ばして夏が来たみたいですね。

さて、今回は医療費負担についてお話ししたいと思います。先日、タイトルにもある75歳以上医療費二割負担(控除される人あり)の法案が衆議院を通りましたね。あまり政治的なお話はしたくないのですが、衆議院を通ったということはほとんど決まったことになると思います。ですので歯科医師の立場から、そもそも医療費負担とは何か?というか医療費とは何か?というか国民皆保険とは何か?についてざっくりとお話ししたいと思います。

そもそも健康保険というものは、保険料を支払うと、医療を受ける際に国が負担をしてくれるという素晴らしい制度です。そしてざっくりになりますが、1958年に国民健康保険法というものが制定され、1961年に国民皆保険が達成されました。それまではおよそ三分の一の国民が保険に加入することができず、医療を受けることができないという状況だったんですね。それが国民皆保険が達成されたことにより、すべての国民(特に子供や高齢者)が医療を安心して受けることができ、劇的に健康寿命を延ばしていったんですね。

そしてこの仕組みは世界的にみて大変珍しいもので、他の先進国では保険は民間が行うことがほとんどであり、「医療費」を「国」が負担することはなかなかないです。これもざっくりいうと、民間が保険を行う場合、当たり前ですが黒字にする必要があります。でないと会社がつぶれてしまうので。ですので保険料や負担金からすべての医療費を賄っているんですね。そのうえで利益も出さないと社員にお金が支払えないのでその分もプラスされます(そうでない国もありますのでざっくり受け取っていただけたら幸いです)。一方日本では、この医療費を国が管理しております。もちろん、保険料も支払っておりますし「負担金」も支払っております。ではこの保険料と負担金を合計した金額と、実際の医療費はいったいいくらくらいになるかご存知ですか?

少し古いデータですが、平成28年のデータでは、保険料が20.7兆円、負担金が4.9兆円に対し、医療費が42.4兆円になります。

金額ででかすぎて目がくらくらしますが、およそ16.8兆円の「赤字」なんですね。当然ですが16.8兆円もの赤字を出してしまったら、企業は倒産します。しかし、日本ではいまでも普通に医療を受けれていますよね。それはなぜか?

この赤字を社会保障費として国が負担してくれているんですね。いやー国というのは本当に懐が深いですね。16.8兆円ものお金を代わりに支払ってくれているんですから(もちろん税金から支払われております)(そして国の負担の話をするとまためちゃくちゃ長くなるのでここは割愛します)。

そして医療費負担の話をしたいと思います。先ほどの国民皆保険が達成されたのが1961年でこの時の負担金が、5割だったんですね。今から考えるととても多く感じますね。しかしここで面白いのが、保険扶養家族が五割で、本人は定額というところ。しかも定額といっても一回200円から600円ほど(物価の違いがあるので現在の金額と比べられませんが)であるということ。そこから1968年に扶養家族は3割になり、1973年に70歳以上の負担金が0になりました。ここまでは値引きが続いておりましたが、ここからは値上げに変わります(オイルショックとバブル崩壊)。1984年に保険者本人が定額から一割負担へ、1997年に一割から二割へ、そして2002年に二割から三割に変わり保険者本人と家族の負担金の差がなくなりました(1980年に扶養家族の入院が二割になっていることがありますがややこしくなるので割愛します)。一方老人健康保険のほうはというと、1996年から入院時に1000円ほどの定額の負担金が始まります。その後なんやかんや経て、2002年に0割から一割に引き上げされ現在に至ります。つまり2002年から2021年の現在までおよそ20年弱は大人3割、高齢者一割(子供は地区によって変わるので割愛しております)がずっと続いていたんですね。

そこで2021年現在、20年弱の沈黙を破り、75歳以上の自己負担額が二割になります。しかしすべての75歳以上の方ではなく、年収が200万円以上の方限定だそうです。おそらく僕よりめちゃくちゃ賢い人たちが長年ずっと考えて出した結論だと思うのできっとこうするしかどうしようもないと思います。若者が減り、高齢者が増え、税収が減り、社会保障費の金額がどんどん増えていっているのもわかります。しかし、なぜ75歳でなぜ二割でなぜ200万円でなぜ今なのかだけがきになります。理想論に聞こえるかもしれませんが、年収や年齢で医療を受けることができる人を区別しないシステムがあればいいなと思います。

まとめます。75歳以上の方、またご家族に75歳以上の方がみえる方、値上がりしますので今のうちにお近くの歯医者に行きましょう。それではまた。

                      歯科医師 河合鮎樹

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