ちょっとした昔の失敗談①
↑新しく入った方の練習台になる僕です
さて、今日は勤務医時代に経験した失敗談をさせて頂きたいと思います。
主訴が「入れ歯が合わない」でこられた92歳のおばあちゃんでした。そしてお口の中を確認させていただき、かなり傷がついていたのと、入れ歯のすり減りがあったので、痛い部分の調節と、歯の盛り足しを行い、一度使ってもらって、痛かったらまた来てください。と診察をその日で終わりました。
この時の僕の個人的な気持ちとしては、90歳も超えてなかなか通うのも大変だろうし、とりあえず調節は行ったからある程度は噛めるようになるだろうし、これで大丈夫だろうと勝手に判断したものでした。
そしてその一週間後またその患者さんがみえました。「やっぱり調節が足りなくて痛くなったのかな?」と思い、中に入っていただき、お話を聞かせていただきました。すると
「先生が調節してくれて痛くなくなったし、咬めるようになった。でももっと噛めるようになりたい。時間がいくらかかってもいいから新しい入れ歯を作ってほしい」とのことでした。
僕はこの話をされたときに、なんて失礼なことをしてしまったんだろうと恥じました。90歳だし、あまり通いたくないだろうし、早く終わったほうがいいだろうというのは僕の勝手な意見で、これを患者さんに聞くことはありませんでした。
その後、時間をしっかりかけて、新しい入れ歯を作り、「これならしっかり噛める!!」と言っていただき、無事終了しました。
それ以来、個人的な勝手な判断で診療を決めることは絶対やめよう。と今の診療に生かさせていただいております。「診察」を行い、「診断」は行いますが、「治療内容」を決めるのは患者様自身です。しっかりとした情報提供を行い、同意していただけるのであればしっかりとした治療を行う。当たり前だとは思いますが、こういった当たり前のことができなかった勤務医時代の恥ずかしいお話しでした。まだまだ失敗談はありますので、需要があればまたお話しさせて頂いたいと思います。あんまり話過ぎてもダメな歯医者だと思われてしまいそうでちょっと怖いですが、それも成長ということで。日々勉強させていただいております。それではまた。
歯科医師 河合鮎樹